2020年10月11日日曜日

「MIDNIGHT SWAN」で嗚咽がヤバすぎる件

 先月今月と観たい映画が目白押しです。

その中でも、公開を正に指折り数え、待ちに待っていたのがこの映画でした。

TOHO系では先行上映が始まっていて、前評判も高く期待も高まっていた訳です。

そして、この映画は15分を超える予告編が公開されており、こちらも話題になっていました。

15分ですよ、15分。観てから観るか、観ないで観るか……

悩みましたが、やはり観たかった。観てしまった。

草彅さんのトランスジェンダーさん姿、何の違和感もないです。いや、そこにいたのは、凪沙さんであって、草彅さんではなかった。今までに女装のコントも観てるからなあとか思ってたけど、そんなんどこにもいませんでした。完全に凪沙さんだった。

音楽がとてつもなく美しい。そして残る。ふとした瞬間、ずっと頭ん中でこの曲が響いていました。今でも夕暮れや寂しげな月なんか見上げた日にゃ、この曲がBGMになっている信藤フィルターです。

まずは、予告編だけで号泣でした。既に物語できてるじゃん! つか、大丈夫? こんなに公開しちゃって?! これから本編観るんですけど?!!


では本編観ての感想です。ネタバレバンバンです。未見の方はご覧にならない方がいいと思います。すごい長いですし。ほぼ自分のための備忘録です……



やられましたよ。予告編どころじゃないですよ。超えてきましたよ。

予告編って、編集って、こういうことなんですね。

のっけからなかなかハードなシーンです。水川さん荒れてます。DVキマってます。一果ちゃんはまともに食べてるんだろうかと心配になります。ポテチはおやつですよ? あなたの腕はご飯じゃないんですよ? 自傷の痕、くっきりです。

広島の実家の母の電話で、凪沙さんは姪っ子の一果ちゃんを短期間預かることになりました。実家には今の生き方と姿は知られていません。二人の奇妙な同居生活が始まりました。

そして始まって20分かそこらで一回目の号泣ポイントです。

「どうして私だけが……あんたなんかにわかんないわよ……なんで……」顔をグシャグシャにして泣く凪沙さんに、劇場のあちこちからすすり泣く声が聞こえます。

凪沙さんちの近所にはバレエスクールがあります。ボールじゃなくて踊る方です。一果ちゃんが元々バレエをやっていたのかはわかりません。体操服で体験に来た彼女に、同じ学校の、りんちゃんがシューズを貸してくれます。これをきっかけにりんちゃんと仲良くなります。裕福な家庭に育ったりんちゃんですが、彼女も闇を抱えています。

一果ちゃんは最初あまりしゃべりません。でもバレエは続けたいのです。そして危ないバイトに手を出してしまいます。そりゃ補導されます。その彼女が、ある日凪沙さんの前で、腕を噛み叫び声をあげます。戸惑いながらも受け止める凪沙さん。その日は一人にできないからと勤め先のショーパブに一果ちゃんを連れて行きます。

和装のママの「はい、オレンジジュース。生100パー。お飲みなさい」は、何気にツボなポイントです。

乱闘後のステージで踊る一果ちゃんはとてもきれいでした。それは凪沙さんの、きっと一番の奥のやらかいとこを締め付けたようで、ヘッドドレスっていうんですか? それを「はい。あげる」。


一果ちゃんのバレエはメキメキ上達。先生かかりっきり。そのタイミングで、それまでホープだったりんちゃんが足を怪我してプロのバレエダンサーを諦めなくてはいけなくなります。りんちゃん、ちょっとグレ始めます。二人の関係はほんの少しシスターっぽいものが見え隠れします。

凪沙さんはホルモン注射を打ち続けています。性適合手術のため少しずつ貯金もしています。ショーパブ勤めの苦しい生活の中でもなんとか一果ちゃんにバレエを続けさせてあげたいと頑張ります。ハニージンジャーソテーも作ります。野菜にドレッシングもドバドバかけます。一果ちゃんに踊りを教えてもらったりもします。バレエじゃないけど、元々踊れる草彅さんが、下手くそに踊るのはちょっとだけ難しかっただろうなと思えます。

お金のため、いや、一果ちゃんのため、男娼になろうともします。一般男性として働こうともします。一般企業の面接官が言った台詞は、まさに今だなあと頭を抱えるものでした。LGBTは流行じゃないのです。髪を切った凪沙さんが、草彅さんに見えなくて凪沙さんのままだったのは驚きでした。


一果ちゃんコンクール直前で緊張してる中、りんちゃんから電話がかかります。一果ちゃん、なんか引っ掛かりを感じます。そして一果ちゃんと同じ時刻、りんちゃんも踊ります。場所はビルの屋上のパーティー会場。ご両親のお友だちの結婚披露でしょうか。屋上。嫌な予感がします。りんちゃんは軽やかに回り、回り、そして飛びます。フェンスの外へ。その瞬間、一果ちゃんは何故かそれを悟ります。舞台で動けなくなった一果ちゃんを、広島から連れ戻しに来た母早織が抱きしめます。


凪沙さんは一大決心します。手術です。母になりたかったのです。

手術を終え、一果ちゃんを迎えに実家へ行った凪沙さん、お母さんに泣きつかれます。「病院に行こう。治してもらおう」「お母さん、これは病気じゃないの。治すものじゃないの」

実家には一果ちゃんと早織さんも来ています。「あなた、こんなところに居ちゃダメよ。踊るのよ」そう言った凪沙さんに早織さんはつかみかかり突き飛ばします。そのはずみで凪沙さんの服が乱れ、胸元があらわになります。そこにはふくらんだ乳房がありました。

狂ったように叫ぶ母親、「化け物」と吐き捨てる早織さん。ここで凪沙さんが「私、お母さんになれるのよ」って言ったのかな。


一果ちゃんは地元の学校を卒業します。彼女はバレエで留学が決まりました。凪沙さんに報告に行くのです。しかし、そこには凪沙さんの変わり果てた姿がありました。術後が良くなかったのか、彼女は失明して患部から出血もあり、介護を受けて暮らしていました。

「最期の冬」は意図的にミスリードだったのかな。患ってて余命1年とかかと思っていました。そうじゃなくて、結果として「最期の冬になった」みたいな。

凪沙さんは一果ちゃんに海に連れてってと頼みます。砂浜で一果ちゃんに踊ってみせてと願い、彼女の踊りを感じながら砂浜に座ったままこと切れます。そして、それを感じた一果ちゃんも入水していき……


一年後だっけかな。トレンチコートに赤い靴を履いた一果ちゃんがいました。ニューヨークのコンクール受けに来たんだっけかな。英語も流暢です。「見ててね」彼女は彼女に語りかけ舞台に立ちます。



音が少し気になりました。メインテーマが流れる前、間が少しあります。それはとてもいいのですが、「ジジジ……」と音が入った気がします。例えるとレコードに針を落とした音みたいな。2回感じたので、これはわざとなのかな。これが信藤は気になりました。すーーーっと水が沁みてくように入ってほしいなあと思いまして。

それと、実家が広島ってのは何か意味あってでしょうか? 広島である理由があるのなら知りたいなと思いました。

前半の電話の場面と一果ちゃんを抱きしめる場面、方言が気になりました。ネイティブじゃない方言って一気にスーッと醒めてしまうのです。ここは残念。ま、映画観終わる頃には飛んでってましたけど。



この映画は全部が全部ガッチリ語ってはくれないです。余白がある、と言うんでしたっけ。りんちゃんが飛び降り自殺した後どうなったとか、なんで凪沙さんの術後が良くないんだとか、タイはこの分野の医療が進んでると思ってたけど違うのかとか、一果ちゃんが海に入ったのは自殺未遂何だかどうなんだかとか、なんで早織さんと一果ちゃんの関係が良くなってどんな約束をしていたのかとか、一果ちゃんがどうしてあんなにもバレエに惹かれていたのかとか(それは最初にチュチュを見つけた時から惹かれていたように見えたので)、椅子を投げつけた同級生はどんくらいの怪我だったのかとか、凪沙さんの介護は正規のものだったのかとか、それこそホルモン注射は正規のお医者さんだったのかとか、あの海のシーンの後は何がどうなったんだろうとか、瑞貴はしょっぴかれたあとどうなったんだろうとか、細かくあげるとキリがないのです。

それも含めて、感じて受け止める映画なのかな。


細かいところは、監督が執筆された小説版ミッドナイトスワンと、「SPECIAL CINEMA BOOK」←パンフレットみたいなことでしょうか、を読めば理解が深まりそうなので、さっそく購入するとしましょう。


あれやこれや書いてますけど、切なくて、美しくて、考えさせられて、温かくて、残酷で、青くて、貧しくて、毅然としてて、清濁併せ呑んで、とにかくものすごいインパクトで、終わってからも、すぐに動きたくはなかった。そのくらい何かにどっぷり浸かるような映画でした。

あちこちに涙が止まらないシーン満載で、マスクは紐ごとグチャグチャのビショビショ。特に砂浜の場面からは、嗚咽が止まらなくて、このままでは周りの観客の迷惑になると思い、頭の中でものすごくくだらないことを一生懸命考えながら感情を抑える努力をしました。なんでこんな一番いいとこで、鼻眼鏡の吹き戻し面をつけた某芸能人を思い浮かべなきゃならんのだと、自問自答を繰り返しながら、必死に横隔膜の震えと戦いました。

……なにをやってるんだ私は。


これ、予告編を観てしまってたから、この程度で済んだけど、もし何の前情報もなく鑑賞していたらこんなもんじゃ済まなかっただろうというくらい、感情を揺さぶられました。


もう一度映画館で観たいけれど、今はまだ観に行く勇気がないのです。嗚咽的に。

でも、あの美しいバレエのシーンなんて、やっぱり大きなスクリーンで観たいですよね。


タイトルバックがBIRDMANのFLYみたいだったなあ……



草彅さんの映画で一番好きだったのは、ホテル・ビーナスです。ミッドナイトスワンはちょっと超えちゃったかな。両方とも音楽も映像も美しくて切なくて。両方とも再生。


あ。そうそう。

エンドロールで観客の何人かが席を立たれました。お時間のご都合ある方もあるでしょう。

しかーし!

この映画は、最後の最後まで観る方がいいです。最後の最後までいいです。


Blu-ray出たら即買いして、おうちで誰に臆することなく嗚咽号泣するのは決定事項として。

もう一回、劇場で観たいなあ…… 観られるかなあ……










2020年10月4日日曜日

TENETさんが頭でぐるんぐるんしているので備忘録

 どうしようかなあー観に行きたいなー。などとグズグズ思っていたのですが。

そもそも一人で黙って観るんだし、平日の早い時刻に行ってみよう!

そんなこんなで観てきました「TENET」さん。


やっぱり人気の映画なんだなあ。人が多いや。

劇場入り口にてアルコール塗り塗り。爪の間もしっかり塗り塗り。ちょっと前目のちょっと右目に着席。

通勤ラッシュに引っかかり5分過ぎて入ってしまいましたが、大丈夫。落ち着いて観よう。

あとでわかったことですが、公開初日の初回だったようです←知らんかったんかい。そりゃ人も多いや。


ネタバレというほどもないですが、内容についても書くので、未見の方は以下読まない方がよろしいかと存じます。お気をつけになってください……


主人公にはお名前がないんですね。謎のミッションに挑むにあたり、タマの入ってない銃を使って的を撃ったり、なんか部品みたいのを拾い上げたり、例の時間の逆行を体験します。

この辺がもう信藤ギブ。もちろん観てて言ってることは理解できているのですが、なんというか疑似体感みたいのができない。この感覚はラストまで続いていきました。

ドラゴンボールみたいのを集めて第3次大戦を止めるのがミッションですかね。接触したセイタ―の奥さん、ほっそいですねー。

インドの武器商人と話すとこ、なぜか愛と哀しみの果てを思い出してしまった。強い女性が酒を飲むってだけですけどね。

空港で飛行機が突っ込むシーンは本物の飛行機を使ったそうで、ど迫力でした。あの謎の敵は誰なんだ?

この映画は物が壊れたりカーチェイスだり戦闘シーンだりと、破裂音や爆音など人をビックリさせる音がバンバン流れます。その度にビクーーーっとするくらい迫力がありました。

初めてIMAXで映画を観たのですが、こういうことなのかIMAX?

とにかく音が凄かった。似たような劇場の体験はあるのですが、今回の方が凄かった。そして飛行機のシーンよりも、凄かったのがカーチェイスのシーンでした。

そりゃもうちょっとしたテーマパーク。2Dなのに観ているだけでもう酔う寸前。ちょっと気持ち悪くなりそうなときには目を閉じるか視線を外せば大丈夫。でもあまり外すとなんか見逃しちゃう。頭がぐるんぐるんしながら必死でついていきました。

あれー? なんで既にカーブミラーが割れてるのだろうか?? なんか当たったっけ???

真ん中に割り込んできたのは何??


後半怒涛の回収開始です。カーブミラー納得。謎の敵納得。アルゴさん取り返すためにあっちにもこっちにも主人公が居る。

ん? 待てよ?? これ、アルゴさんをリモコンに持ち替えると…… サマータイムマシンブルース??? 椅子の代わりに回転ドア???

時間を細かくいったり来たりする場面で一旦そう思うと、もうそうとしか見えてこない私のポンコツ脳よ……


しかし。やっぱり時間の逆行ってのが今一つピンと来なかったのです。最初の的を撃つとこで主人公と同じように学習できていたら違和感なかったんだろうなあ。体感ではなく、頭で考えているうちにアクションは進んでいて間に合わない。船からの景色に「不思議ね」と静かに驚く奥さん、ご無事でよろしかったですね、私も同じ気持ちですよ。これを見てもまだピンとこないのです。最後の戦闘シーンの逆行チームと順行チームの折には涙目です。もう何がなんだか😭😭😭

逆行の攻撃で建物を破壊する部分と、順行で敵を撃つ部分が同じスクリーンで同時進行している。情報量が多すぎてついていくのに必死です。あっちもこっちもどうして同じ場所に存在できるのだろか。既にスクリーンは三密どころかみっちみちに密ですが。

逆行シーンを頭が納得して疑似体感できたら、もっともっと楽しめるんだろうなあと思うです。そこがものすごく悔しい私の脳味噌。そういえば、最初に主人公がラボみたいなとこでレクチャー受けるとき「考えるな、感じろ」みたいなことを言われてました。何度も観ればできるのだろうか。


でもこのミッションの依頼人には割と早く気付きました。ここは王道中の王道でスッキリです。リュックの根付(と言っていいのか)は何の付箋だろうと思いましたが、泣かせるとこまで王道で。

最後の最後の回収までお見事! でした。インドの倍賞美津子さんは本当のフィクサーをご存じなかったのでしょうか?


どうして主人公がアルゴさんを知っていたのかとか、ニールと出会ったのはいつどこでどうやってとか、キャットとはどうなったとか、諸々含め、多分続編あるんですよね? そういうフリですよね??

でもインターステラ―もそう思ったけど続編ないしなあ。

まずは、映画の中に入り込んで逆行を楽しめるようになりましょうか。インターステラ―ではいとも簡単に入り込めたのになあ。