いつの頃だったか、きっともう20年以上前のお話。
何かで読んだんだか観たんだかで、夢日記をつけていた時期があった。
枕元にノートとペンを置いて、起きたらすぐに夢を書き留める。忘れないうちに。
起きてから牛のように夢を反芻しているだけだと、どっかのタイミングで忘れたり、記憶を書き換えたりしてしまっていた。
それがほぼ無くなった。なんというか…… 昔のことを思い出すように、鮮明にたどれるのだ。
その夢日記もいつかつけなくなっていた。
先日、ふとその頃の夢の一つを思い出した。
登場する場所ひとつが浮かぶと…… 乗り込んだガラス張りのカットのエレベーター、地下の水場、駐車場に繋がる非常用階段……
ズルズルと芋づる式に風景が浮かぶ。
すると、別の夢の景色も思い出す。これまた芋づる式に。
水が溢れた中を腰までつかり野球選手と進んでいるところ、小さな日当たりの悪いアパートに作り付けで置いてある洗濯機、山肌に並ぶ市場と旗のようなきれいな布、通路は土のままアーケードのある薄暗い商店街……
あの頃、日記につけた夢の風景はまるで体験した現実のように覚えていた。
なんで日記をつけなくなったのか。たぶん、2つ分の世界を覚えているのがたいへんになったからかな。いや、2つ分だけとは限らない。夢の数だけあるのかな。頭が休む暇が無くなったからかな。
でももう一度つけてみようかな。そしたら、あの続きがみられるかな。
ちょっと迷っている日記のお話。